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東京高等裁判所 平成6年(行ケ)254号 判決

東京都中央区東日本橋1丁目2番7号

原告

株式会社 入澤商会

代表者代表取締役

入澤郁夫

訴訟代理人弁理士

和田成則

東京都千代田区霞が関三丁目4番3号

被告

特許庁長官 高島章

指定代理人

鈴木新五

土屋良弘

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

特許庁が、平成3年審判第9916号事件について、平成6年9月7日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和63年6月28日、「ラコメット」の片仮名文字を上段に、「LaComete」の欧文字を下段にそれぞれ横書きしてなる別紙(1)表示の商標(以下「本願商標」という。)につき、指定商品を第17類「被服(運動用特殊被服を除く)、布製見回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」として商標登録出願をした(商願昭和63-第73739号)が、平成3年4月9日に拒絶査定を受けたので、同年5月17日、これに対する不服の審判の請求をした。

特許庁は、同請求を同年審判第9916号事件として審理したうえ、平成6年9月7日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年10月12日、原告に送達された。

2  審決の理由

審決は、「COMET」の欧文字を上段に、「コメット」の片仮名文字を下段に横書きしてなる別紙(2)表示の登録第2269072号商標(指定商品第17類「被服、その他本類に属する商品」、昭和62年6月24日登録出願、平成2年9月21日設定登録。以下「引用商標」という。)を引用し、本願商標は、引用商標と称呼において類似し、かつ、その指定商品の引用商標のものと同一と認められるから、商標法4条1項11号(平成3年法律第65号による改正前のもの、以下同じ。)に該当し、商標登録を受けることができないと判断した。

第3  原告の陳述の要点

1  本願商標は、引用商標に類似するものであり、現時点で判断する限り、商標法4条1項11号に該当するものとなることは認める。

なお、本願商標の連合商標として、「ラコメット」の片仮名文字を横書きしてなる商標登録第1405310号商標(指定商品第17類「被服、布製見回品、寝具類」、昭和55年1月31日設定登録。平成元年8月10日更新出願、平成2年6月27日更新登録。以下「本件連合商標」という。)があるから、引用商標自体、本来、本願商標が引用商標に類似し商標法4条1項11号に該当するのと同じく、同連合商標に類似し同法条に該当するものとして、その登録出願は拒絶されるべきものであった。

2  原告は、平成6年11月9日、引用商標につき、継続して3年以上我が国において使用されていないことを理由として、商標法50条に基づき、商標登録の取消しの審判の請求をした。

引用商標の登録が同請求に係る審決により取り消された場合には、本願商標につき同法4条1項11号の要件は消滅し、本願商標は登録が認められるべきものとなるから、そのときには、本件審決は取り消されるべきものとなる。

そこで、原告は、上記不使用取消しの審判の審決確定に至るまで、本訴の手続きが中止されることを希望する。

第4  被告の陳述の要点

原告がその主張のとおり引用商標につき不使用取消しの審判の請求をしたことは認めるが、同請求の結果いかんは、本訴の結論に何らの影響も与えるものではない。

すなわち、本訴の審理の対象である本件審決の違法性の有無は、同審決のなされた時点を基準とするものと解すべきであって、その後の後発的事由によって判断すべきものではなく、また、不使用取消しの審決により登録商標の商標権が消滅するのは審決確定後であってその効果が遡及することもない(商標法54条)以上、本件審決後である平成6年11月9日になされた上記不使用取消し請求の審判の帰結が本件審決の違法性の有無に影響することは、およそありえないからである。

したがって、上記不使用取消し請求の審判の帰結をみるため本訴の手続きを中止するのは、全く無意味という以外にない。

第5  証拠

本件記録中の書証目録の記載を引用する。

第6  当裁判所の判断

1  本願商標が引用商標に類似するものであり、商標法4条1項11号に該当することは、原告の自認するところであり、この旨を述べた審決の判断は正当であって、審決を取り消すべき瑕疵は見いだせない。

不使用を理由とする商標登録取消しの審決により商標権が消滅するのは同審決の確定時であって、その効果が遡及することはなく(商標法54条)、一方、審決取消訴訟の審理の対象である審決の違法性の有無の判断は、審決のなされた時点を基準とするものと解すべきであるから、上記不使用取消し請求の審判の帰結が本件審決の結論、ひいては本訴の帰すうを左右することはありえず、本件訴訟手続を中止する理由はない。

2  よって、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 山下和明 裁判官 芝田俊文)

別紙

〈省略〉

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